情報処理学会 インタラクション2025

食事は単なる栄養補給にとどまらず，楽しい体験を通じて私たちの生活を豊かにする重要な要素である．一方で，食生活の改善は生活習慣病や肥満の一次予防と重症化予防につながると報告されている．多くの場合，塩分や糖分を控えた飲料を摂取したり，好きな食品を我慢する必要がある．そこで我々は，食品や飲料品摂取に温度覚といった様々な感覚を与え，新たな食体験を創出しようと試みてきた．本研究では，特に飲料の摂取において，超音波処理をすることによって，「のど越し」「炭酸の強さ」「なめらかさ」「爽快感」「味の濃さ」「後味」「おいしさ」「口中香」「心地よさ」といった “飲料体験” や味覚に影響を与える方法として，Fizzraw を提案する．Fizzraw では，飲用時に炭酸飲料への超音波振動処理を実現するため，ストロー内部に超音波振動子を配置した．Fizzraw を用いて飲用直前に飲料へ超音波処理をし，飲料体験や味覚の変化を調査した．評価実験の結果，飲用直前に飲料へ超音波処理をすることで，「なめらかさ」が増加する傾向があり, また，超音波振動子を中心部に内蔵した細い Fizzraw では，常温炭酸水において「甘味」が強まる可能性があることが明らかになった．