情報処理学会 インタラクション2025

日本では高齢化の進展に伴い，高齢者が介護の必要性に応じて，病院から介護施設へ転院・転所するケースが増加している．高齢者の転院・転所が行われる際には，異なる専門性を持つ施設間での機微性を含む情報の共有が必要となるが，現状の情報共有支援技術はこれを十分に支援できていない．そこで本研究では，異なる専門性を持つ施設間での機微性を含む情報の授受に関する課題を探索するため，高齢者の転院・転所における情報の送り手側と受け手側の職員を対象にした2つの調査を行った．調査の結果，情報の送り手側は，受け手側への配慮として事実に基づいた重要な情報のみを共有しようとする傾向が見られたが，受け手側はその情報を不十分と感じる場合があることが明らかになった．これらの知見は，専門職間での機微性を含む情報の共有を促進する技術の設計において，重要な示唆を提供するものである．