情報処理学会 インタラクション2026

文献情報

タイトル
視覚刺激を用いた牽引力錯覚の知覚変化を提示するVRシステム
著者
  • 服部 圭吾(立命館大学大学院)
  • 橋口 哲志(立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構)
  • 田辺 健(国立研究開発法人産業技術総合研究所)
  • 雨宮 智浩(東京大学)
  • 柴田 史久(立命館大学大学院)
  • 木村 朝子(立命館大学大学院)
アブストラクト
説明画像

牽引力錯覚とは,外力を発生させることなく,身体が特定の方向に引かれているかのような力感を知覚する現象である.この錯覚は,加速度変化に非対称性をもたせた振動刺激によって力の方向性が強調されることで生起すると考えられている[1].非対称振動による牽引力錯覚は,小型の振動子のみで成立し,装置の接地を必要とせずに方向性のある力覚を提示できるため,ゲームコントローラやウェアラブルデバイスにおける力覚提示手法として有効である.このような特徴から,非対称振動による牽引力錯覚は,小型デバイスにおける力覚提示手法として様々な応用が検討されてきた.例えば,歩行誘導や操作方向の提示といった直感的な誘導インタフェースへの応用が報告されている[2][3].さらに,体験コンテンツへの応用として,高椋らは釣り体験を題材に,魚の引きや大きさ,さらには生物らしさを非対称振動によって表現できることを示している[4].しかし,これらの研究の多くは,牽引力錯覚を表現手段として用いるにとどまり,他の感覚刺激との組み合わせによる知覚変化については十分に整理されていない. 触覚提示は振動刺激に限らず,視覚刺激の操作によっても変調可能であることが知られている.視覚的な変形や運動量の操作によって,実際には力を加えることなく,抵抗感や重量感といった多様な力覚を知覚させられることが示されている[5][6].これらの知見は,力覚が触覚刺激単独ではなく,視覚情報を含む複数の感覚の統合によって構成される知覚現象であることを示唆している.視覚刺激と牽引力錯覚を組み合わせた研究として,川岸らは,ユーザの入力に対する表示の移動量を変化させるC/D 比に基づくpseudo-haptics と非対称振動による牽引力錯覚を併用することで,推進力および抵抗力の知覚が強化されることを示した[7].この研究は,視覚刺激が牽引力錯覚の知覚に影響を与えうることを示した点で重要である一方,ユーザの能動的な操作を前提としており,物体の運動そのものが持つ視覚的因果表現が牽引力錯覚の知覚に与える影響については,十分に検討されていない.そこで本研究では,非対称振動によって生じる牽引力錯覚に対して,物体の運動を示す視覚刺激を組み合わせることで,体験者が知覚する推進力および抵抗力がどのように変化するかに着目する.本デモ展示では,力が生じている理由や方向を理解しやすい視覚表現を付与することで,牽引力錯覚の知覚がどのように変化するかを,体験可能な形で提示する.

雑誌名
インタラクション2026論文集
© 情報処理学会 2026
論文ID
2B50
ページ
742-743
発行日
2026年2月20日
発行所
発行人 一般社団法人 情報処理学会
住所 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台一丁目5番地 化学会館4F
TEL. 東京 (03) 3518-8374 (代表)
E-mail